住宅ローンにおけるがん保険の価値・期待値

インベスターZの「3,500万円の家を住宅ローンで借りたら6,000万」という内容がバズってました。

#インベスターZ 「3500万円の家を買ったら6000万?!」持ち家と賃貸、どっちが得? – Togetter

※ 住宅ローン回は原作で2016年掲載

こういう内容も考慮しつつ自分は2022年に変動金利35年で一戸建てを購入しました。マイホームについての論点は

  • 持家か賃貸か
  • 一戸建てかマンションか
  • 都心か郊外か

なども論点がありますが、これらについて話すと長くなるし決着もつかないのでこのエントリでは「どの住宅ローンを選ぶか」に絞って考えます。

モゲチェックさまさま

さて、住宅ローンを検討するにあたって頼りなったのはモゲチェック様です。

こちらのサイト、変動金利寄りの主張が多いのですが、ロジックが通って納得感がありました。ネットを見てると「実は変動金利は危ない」のようなホラーストーリーがあるのですが、いろいろ考えた結果、リスク管理計画をしつつ変動金利35年・元利均等を選ぶというギャンブルにベットすることができました。

モゲチェックの塩沢さんのツイートは読んでて面白く住宅ローンに対する理解が深まるため、ローン検討中の方はチェックするのがよいです。

あと書籍としてはこちらを読みました。

住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本

住宅ローンについている団信

私は基本的に保険否定派で、就業不能保険にしか入っていませんでした。保険については以下の本が好きです。

いらない保険 生命保険会社が知られたくない「本当の話」

ただ、いろいろ調べると団信だけは別で、掛け金が非常に安く加入できるので、これは利用者が得になる可能性が大いにあるな、と思えてきました。

団信に対するモゲチェックの記事も非常に参考になりました。

団体信用生命保険の経済的価値を考える | モゲチェック

団信の構造

上記記事から図を引用します。

  • 死んだら住宅ローン残高が0円になる保険は付属
  • それ以外はローン金利に上乗せすることで、さまざまな保険が利用可能
    • 例えば、ローン金利に0.1%上乗せして、がんと診断されたら住宅ローン残高が0円になる"がん団信100%"を付けることができる。
  • 銀行によっては、ローン金利に上乗せせず、がんと診断されたら住宅ローンの残高が半額になる"がん団信50%"を付けることができる。

これが基本構造です。今回迷ったのは"がん保険"の部分であり、当時我々が検討していた時は

  • 新生銀行 0.35% がん保険なし
  • auじぶん銀行 0.389% がん団信50%
  • 新生銀行 0.45% がん団信100%

から選ぶ必要がありました。なお、我々のローン実行が終わった後の2022年12月現在は

  • Paypay銀行 0.349% がん団信50%

が登場したのでこれ一択です。どの住宅ローンを選ぶべきか知りたい人はここで記事を読むのをやめてもらって結構ですw

話それましたが、新生がん保険なし・auじぶんがん保険50%・新生がん保険100%から選ぶには がん保険の利益を考える必要がありました。

がん保険以外の団信は考えなくてよい?

がん保険の利益 に行く前に書きます。結論からすると我々は

  • がん保険以外の団信は不要

という判断をしました。以下がその理由です。

脳卒中・急性心筋梗塞

罹患して手術をしたり、一定の症状が60日以上継続すると住宅ローン残高が0円になる 保険。

これを不要と考えた理由なのですが、がんは予防ができない病気なのに比べて脳卒中・急性心筋梗塞は予防ができるので、住宅ローンに金利を上乗せするよりは予防に金をかけるべきだと思ったからです。

"がん保険の利益"を考えますが、病気にならないのが一番いい。ただ、がんは健康に気を使っててもなってしまう場合があるから、保険を考えてるだけです。

ということで、脳卒中・急性心筋梗塞対策として、健康的な生活をしたり定期的に脳ドッグに通って予防することにしました。

高血圧など8大疾病

<strong>罹患して働けない状態だと12か月間毎月返済額が免除され、180日以上入院または働けない状態が12か月継続すると住宅ローンが0円になる</strong>保険

これは単純に上記条件を満たすことが難しいのと、同等の保険で"就業不能保険"に入った方がカバー範囲が広いと思ったからです。今の医療技術で「180日以上入院または働けない状態が12か月継続」って、8大疾病にかかったとしてもこの条件に達する前に職場復帰できるような気がします。

逆にこうなってしまう場合は保険が必要なのですが、そこは8大疾病以外にも対応する"就業不能保険"の方がよい。例えば交通事故で寝たきりになってしまうと8大疾病ではカバーできないが"就業不能保険"なら大丈夫。

以上より、団信で考慮するのはがん保険だけで良いと考えました。

がん保険の利益

がん発生確率 × その時チャラになるローン残高で考えます。

がん発生確率

こちらを参照

がんになる確率やなりやすい年齢は?数字で見るがんのリスク – 【i保険】

私はほぼ40歳なので"現在の年齢 40歳"を利用します。

40歳の場合

  • 10年後にがんになっている確率は1.5%
  • 1年でがんになる確率は1.5% / 10 = 0.15%
  • 一か月でがんになる確率は0.15% / 12 = 0.013%

50歳の場合

  • 11年後~20年後までにがんになる人は5.3%
    • 20年後にがんになっている確率は6.8%
    • 10年後にがんになった人は1.5%
  • 1年でがんになる確率は5.3% / 10 = 0.53%
  • 一か月でがんになる確率は0.53% / 12 = 0.044%

利益

チャラになるローン残高 × がん発生確率

例えば、40歳で3500万円のローンを組んで、初月にローンがチャラになる確率は0.013%。となると、初月のがん保険の利益 = 期待値は

35,000,000円 * 0.013% = 4,550円

となります。

2か月目のがん保険の利益 = 期待値ですが、3500万円の35年ローンを借りる場合、月々の返済金額は約8万9000円なので、2か月目のローン残高は34,911,000円。

34,911,000円 * 0.013% = 4,538円

となります。これを繰り返すと35年間 = 420か月での期待値総計を出すことができます。

ローン比較

この条件で以下の3つを比較。

  • 新生銀行 0.35% がん保険なし
  • auじぶん銀行 0.389% がん団信50%
  • 新生銀行 0.45% がん団信100%

結果は以下。

新生銀行 0.35% がん保険なしauじぶん銀行 0.389% がん団信50%新生銀行 0.45% がん団信100%
ローン金額35,000,000円35,000,000円35,000,000円
ローン金利0.350%0.389%0.450%
がん保険0%50%100%
ローン返済額37,192,404円37,442,111円37,834,902円
がん保険の期待値0円1,623,603円3,265,317円
ローン返済額 – がん保険の期待値37,192,404円35,818,508円34,569,585円

計算上は「新生銀行 0.45% がん団信100%」が一番お得となりました。

計算元シートのイメージはこちらです。

Googleスプレッドシートはこちらです。

ローン計算

ローン計算にはこちらのサイトを利用しました。

ローン返済(毎月払い) – 高精度計算サイト

私はがんにならない!という人へ

私もそう思っています。がん家計でもないし。タダでがん保険がついてくるのに、金利に0.1%上乗せする意味あるの?と。

なので「仮にがんになる確率が他の人に比べて半分だったら」という視点で計算しました。これは簡単で、がん保険の期待値を半分にすればよいです。

新生銀行 0.35% がん保険なしauじぶん銀行 0.389% がん団信50%新生銀行 0.45% がん団信100%
ローン金額35,000,000円35,000,000円35,000,000円
ローン金利0.350%0.389%0.450%
がん保険0%50%100%
ローン返済額37,192,404円37,442,111円37,834,902円
がん保険の期待値0円1,623,603円3,265,317円
がん保険の期待値(がん確率50%)0円811,801円1,632,659円
ローン返済額 – がん保険の期待値(がん確率50%)37,192,404円36,630,310円36,202,243円

こうなると、auじぶん銀行 がん団信50%と新生銀行0.45% がん団信100%が近づいてきました。

それでは「がんになる確率が他の人に比べてx%低かったら」で計算すれば損益分岐点が出ます。ということで、計算したのがこちら。

  • 俺は絶対にがんにならない!~平均に比べてがんになる確率が15%くらいだ!と思う人
    • 新生銀行 0.35% がん団信なしを選びましょう
  • 平均に比べてがんになる確率が15%くらいだ!~25%くらいだ、と思う人
    • auじぶん銀行 0.389% がん団信50%を選びましょう
  • 平均に比べてがんになる確率が25%以上だ、と思う人
    • 新生銀行 0.45% がん団信 100%を選びましょう

が結論です。

注意点

住宅ローン開始タイミングでがん保険の利益 = 期待値がだいぶ違う

今回は40歳スタートで住宅ローンを組んだので、40歳~75歳でがんになる確率で計算し、がん保険の利益 = 期待値が高くなりました。これが30歳だと30歳~65歳のがん確率なので、がん保険の利益 = 期待値は大分低くなります。

実際、仮に30歳だとして計算したところ、がん保険の期待値が1/3くらいになってしまいました。

新生銀行 0.35% がん保険なしauじぶん銀行 0.389% がん団信50%新生銀行 0.45% がん団信100%
ローン金額35,000,000円35,000,000円35,000,000円
ローン金利0.350%0.389%0.450%
がん保険0%50%100%
ローン返済額37,192,404円37,442,111円37,834,902円
がん保険の期待値(40歳~)0円1,623,603円3,265,317円
がん保険の期待値(30歳~)0円602,626円1,212,373円

若いなら、単純に金利が安いところを選んだ方がよいですね。

繰り上げ返済すると計算が狂う

がん保険の期待値は住宅ローンの残金で動きます。繰り上げ返済をするとそのぶんがん保険の期待値も下がります。

余談:我々のローン戦略

理想としては13年間は繰り上げ返済なしで、住宅ローン控除をめいいっぱい受ける。その後は、状況に応じて繰り上げ返済を検討する、ベンチマークは現時点の35年固定金利1.3%で、変動金利で支払う総額がこれを超えなければOK、超えそうであれば繰り上げ返済で調整する、です。

正直、13年後に変動金利が上がっても利息の半分くらいは支払っているので、繰り上げ返済は不要かなと思っています。

一番最悪なのは、2,3年後に変動金利がめちゃくちゃ上がって、繰り上げ返済もできないのに利息が膨らんでいくパターンですが、そこはギャンブルなので負けを受け入れるしかないです。