男子スロープ決勝のミスジャッジについて思った事
最初に言いたいことをまとめます。
- パロットの点数を90点としたのは、実際ミスジャッジである
- ジャッジが悪いというより、技の高難易度化に見る側もついていけない
- ジャッジ体制の強化、あるいは競技内容の変更が必要
2022年2月7日に行われた男子スロープ決勝、面白かったですね。ハマカイがカメラマンが追えないラインを取ったり、"クローザー"こと3本目の男、マーク・マクモリスが3本目を完璧に決めてラオウポーズしたところがハイライトでした。
ところでハイライトと言えばこちら。
マックス・パロットさんのスカグラブがインディグラブと判定され、そのまま優勝してしまった事です。
ジャッジシートはこちら OWG2022_SBD_C77S2_SBDMSS—————-FNL———.pdf
2位のシャオミン差は2点とわずかだったので、これがちゃんと判定されていればマックスさんの金はなかったと思います。
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実際、ミスジャッジである
これをスローで何回も見たのですが、どこからどう見てもインディを掴んでいるようには見えませんでした。カナダのパロット応援勢(一応いるらしい)のSNS見てると「もうこの件は終わりだ」と必死に幕引きをしていますが、グラブしていないと分かっているからの対応でしょう。
原因をジャッジの能力に求めるのは間違い
ミスジャッジはミスジャッジですが、ジャッジを攻めても何もならないし「文句言うならお前が代わりにジャッジして見ろ」というのも意味がない。
ミスの原因を人のせいして責任や失敗を押し付けてもまた同じミスが起きるだけ。このミスを再発させないためには、手順や作業環境を見直し、仕組みを変えることが重要です。
ヒューマンエラー防止|「ミスをしない仕組み」をつくることが大切|人材育成・社員研修|ラーニングエージェンシー
ヒューマンエラー防止のために一所懸命取り組んでいるのに、ミスが一向に減らない組織があります。 なぜミスが減らないか、わかりますか?
それはヒューマンエラーの原因を「人のせい」にしているからです。
ミスが起きた際に「ミスを二度とするな!」と叱責するだけではミスの防止にはつながりません。ミスしたことを叱るのではなく、ミスが起きない仕組みを作ることが大切なのです。
ジャッジミスの原因を探る
今回のミスが女子スロープや男子ビッグエアでも発生するか?女子は回転数が少なく見やすい、男子ビッグエアも超絶トリックながら1発ものだから、スカグラブが見逃されることはないでしょう。
つまり男子スロープのように 30秒程度のランで複雑な技が6つも繰り出され、それを短い時間でジャッジングしなければいけなかったのが、今回のミスの要因だと思います。
話によると、今回は
- ジブセクション3つ
- ジャンプセクション3つ
- オーバーオールジャッジ
の3チーム分業制でジャッジでしたが、それでもミスは発生した。
つまり、セクション(とそのセクションで出される技の難易度)の数に対してジャッジの数が足りないのが、今回のミスの原因かと思います。
再発防止策
ジャッジの数を増やす
極論を言えば、1セクション毎に専用のジャッジをつける。そのジャッジは自分が担当するセクションだけを死ぬ気で見る。これでビッグエアと同じで1セクション = 1ジャッジチームになるのでジャッジしやすいでしょう。
セクションの数を減らす
これは極論ですが「そんなにジャッジ用意できねぇよ」って場合はセクションの数を減らすしかない。つまらないので出来れば避けてほしいですが。
スタート前にやる技を申告する
全くフリースタイルではないが、そうするとジャッジも若干心の準備が出来るからいいのでは?
ゆっくりとスロー映像を確認できるようにする
スロー映像を2,3回確認できれば、FIS国際ジャッジレベルなら問題なくジャッジングできるはず。
メジャー競技になるために
昔の話をすると、20年前のフィギュアスケートで買収事件が発生し、採点基準を見直して今や人気スポーツになりました。
2002年ソルトレークシティオリンピックのフィギュアスケート・スキャンダル – Wikipedia
今回ならスキージャンプ混合でスーツの規定違反が続出したのも4年後には改善されるだろうし、そうじゃなかったら不人気スポーツとして忘れられてしまうかもしれない。
スノーボードの本質はスタイルだと言いたい気持ちはあるけれど、オリンピックに乗っかる以上は誰が見てもクリアな採点基準じゃなきゃいけないし、ミスジャッジも無くさなきゃいけない。そうじゃなければ一般には人気が出なくなるだろうなぁと思いました。
余談:ジャッジに対して指摘するのも正統な行為
プロとして仕事でジャッジングをしている人に「ミスジャッジしたね」と指摘するのは正当な指摘であると考えます。プロ野球の球審がボールをストライクと言ったら、サッカーの主審が誤審でPK判定したら大目に見ますか?という話。「俺たちの仲間だから大目に見よう」では、競技として育たないと思います。
とはいえ今回の採点はこれ以外は相当納得感がある。映像を見返してみると「ああ確かにな」という採点が多いし、カメラで追えないハマカイのランも点数付けれてるし、NHK解説者がBSトリプル1620、youtubeライブをやっていたチョコバニラボール新井さんがBSクワッド1800とどちらも回転数を間違えていたシャオミンのBSトリプル1800もしっかりジャッジしてる。
ジャッジの選定を間違った、とかジャッジの能力不足、といった批判はお門違いでしょう。
余談その2
"You Be The Judge"—A Discussion with Olympic Snowboarding Head Judge I – Slush Magazine
ジャッジによると、ジャッジに提供された映像では完璧にグラブしているように見えた、とのこと。確かに、私のブログの冒頭で張り付けた写真では完璧にグラブしていないように見えるが、別の映像だとよく分かりません。ってことは再発防止策は いろんな角度から撮影した映像をジャッジに提供するでいいのでは?
Congrats to the Men’s Snowboard Slopestyle Olympic gold medalist! : snowboarding
海外redditでも熱く話し合われています。snowboard板なんてあったんですね。
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