「となり町戦争」読了。
結論から言うとこんなばかげた話は現実に起こらない。仮に戦争になるのなら、当然その町の人は反対するだろうし周り(その他の国民やマスコミ)も黙っちゃいないだろうからだ。なのでこれは完全なフィクション。「今のナショナリズム大切!な流れだとこういう未来が来るかもしれないから、平和を愛する心を持ち続けよう」というものではない。
この本で発生するとなり町との戦争は非常に奇妙。知らない間に始まる戦争。銃声は聞こえない。敵対している隣町を通過して通勤。「ありえねー」「ギャグか」と読み進めていくうちに、ふと思う。平穏と戦争の境目は何なのか?例えば北朝鮮と日本が戦争になったとして、日本にミサイルさえ落ちてこなければ僕らは普通の生活、通勤したり遊んだりし続けるんじゃないのか?現実の戦争でもその境目ははっきりしないんじゃないのか?
「ばかげた話」「非現実的」と受け止めていたとなり町戦争が現実味を帯びていく。僕らの生活が変わらなくても、戦争中は確実に命が失われていく。その事に僕らが無関心なだけで。事実戦争とは殺し合いなのに、この本ではそれが連想されないように書いている。
この本の評価がAmazonで低いのはこれといった盛り上がり所がなく、淡々と物語が進むからじゃないかな?(主人公でさえ「良く分からないまま戦争が始まり、良く分からないまま戦争が終わった」と言っているくらいだ。)けど戦争参加国の一般市民などこの本の読了後と同じ程度の気分しか感じないんじゃないかな。結局TVが伝える悲惨な映像がなければ、戦争を実感できないのだ。
隣町同士が「今まで協力して戦争事業を行ってきたように、これからは他の事業でも協力し合おう」と終わるとなり町戦争。国同士が戦い兵士が地を流しても最後は「平和的解決」で両国首脳が握手して戦争終了。現代の戦争を縮図化したブラックユーモアであり皮肉だと思う。1日経過しても感じる薄気味悪さを覚えておきたい。
集英社
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となり町戦争
なさそうでありそうな
この作品の良さがわからない
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となり町戦争
ある日,突然にとなり町との戦争が始まった.