「タートル流投資の魔術」読了。

インデックス投資至上主義の「ウォール街のランダムウォーカー」読んだなら、その反対の本も読まなきゃねってことで。

■感想

サブプライム問題でも損失受けなかった賢いヘッジファンドの人が書きましたって感じ。

ウォールストリート日記 : ヘッジファンドと金融危機(議会証言より)←こんな人たち

この本の著者はシステムトレード主体で利益を上げるやりかた。ちなみにシステムトレードってのは株価チャートに表示される指標を使って人間の意図が入らないよう決めたルール通りに取引を行う事。例えば過去25日の株価平均が過去70日の株価平均を上回ったら買うとか。ちなみにこれは「ランダムウォーカー」では無意味とされている手法です。

で、タートルズってのは80年代にシステムトレードで大儲けした集団なんだけど、トレードのルールは門外不出。それをタートルズの最優秀メンバーが明らかにしたのがこの本。…なんだけど、実は世間一般で使われてるようなルールをちょっと改良しただけのものでした。そんなルールより重要なことは2つ。

  1. 決められたルールを守る
  2. リスク管理をする

と書いてある。本の前半はいかに人間が心理的に弱くルールを破ってしまうかについて書かれている。著者が言うにはルールを守ることが一番大切で、リスク管理

  • 破産しないため
  • 損失が膨らんでルールを破らないようにするため

だけのもの。

リターンのばらつきを防ぐため分散投資も推奨しており、ここらへんのくだりは「ランダムウォーカー」と通じるものがありました。どちらも

  1. 未来は予測できない
  2. 人間の能力は信用できない

ってスタンスだもんなぁ。

■エッジ(優位性)のある取引を

つまり、勝ち目がある戦いを挑めってこと。気分やカンで買うなんてもってのほか。普通にやれば手数料分負けるので、勝てる確率が高いときに市場に参入する事が大前提。ここの考え方は「サブプライム後の新資産運用」と一緒かなー。勝ち馬に乗るってのはギャンブルでは重要なようで。

■後編:システムトレードの話

本の後編は勝てるシステムの作り方。あんまり興味がなかったけど、統計学の話として面白く読めました。例えばよくある「このトレーディングシステムを使えば今までに○○円も儲かった!」という胡散臭い広告。嘘ではないが、そのシステムは過去のある一定期間でしか成果を上げられないような最適化がされており、広告は嘘ではないが現実に使えるシステムではないことなど(もちろん業者は分かって宣伝している)。
あとは自分の構築したシステムを間違いなく測定するためのテスト方法がいろいろと。まぁ真面目にシステムトレード考えてる人なら知ってる事なのかな?

■システムトレードは有効かどうか。

この本を読み終えるとまるで自分でも(ルールさえ守れば)システムトレードで成功できるように思うかもしれないが、普通の人がこの本を読んで成功できるかというと疑問。というのはタートルズは新聞広告に応募してきた1000人から選りすぐった10数名の話で、それでも半数はあまり成功しなかったのだから。

あとこの本は20年間のデータを使って話をしているが、「ランダムウォーカー」は100年間のデータを使っているのでそっちの方が信頼度は高い。タートルズのシステムトレードは確かに儲けてるかもしれないけど、インデックス投資と比べてどうか書かれてないのでそれも調べる必要がある。

つか、「ランダムウォーカー」は「10年20年その方法が上手くいったとしても100年は続かないからインデックス投資」って言ってるので、この本の内容と矛盾はしないんですよ。この本はあくまで1980年から今までの話なので。だから、この本を支持してシステムトレードするなら少なくても100年分のデータを取り寄せてちゃんと調べる必要はあるよね。

■まとめ

突っ込みどころは多いが実話なのでリアリティがあり、素人からタートルズになりトレードで成功した人の自伝として読むだけでも面白い。後半は数字に強くないと辛いかもしれないけど。日本語訳は読みやすいので投資分野に興味のある人ならお勧めできる本。

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